中学生が塾に通う前に確認したい3つのこと
中学生の塾選びは、体験授業に行く前の準備で結果が大きく変わります。有名な塾に入ったのに続かなかった、という声は少なくありません。教室を探し始める前に、親子で整理しておきたいことが三つあります。教育アドバイザーとして多くのご家庭を見てきた経験から、順番にお伝えします。
通う目的をはっきりさせる
塾選びで最初に決めたいのは、何のために通うのかという目的です。目的が曖昧なまま探すと、口コミや知名度で選んでしまい、通い始めてからズレに気づきます。
目的は大きく次の三つに分けられます。
- 定期テストの点数を上げたい
- 苦手教科を克服したい
- 高校受験に向けて志望校へ届く力をつけたい
どれが一番近いかで、合う塾は変わります。定期テスト対策なら、学校の教科書に沿って教えてくれる個別指導や、テスト前に自習室を使える塾が向いています。受験が目的なら、入試の傾向を把握している集団塾や、過去問演習が手厚い塾が候補になります。
「全部上げたい」という気持ちは自然ですが、まずは一番困っていることを一つだけ選んでください。優先順位が決まると、塾の比較が一気に楽になります。
今の成績と学年ごとの課題を知る
通知表や定期テストの答案を並べて、どの教科のどこでつまずいているかを確認します。数学なら、中1で学ぶ正負の数や文字式が土台です。英語ならbe動詞と一般動詞の区別が土台になります。ここが抜けたままだと、中2の連立方程式や中3の二次方程式で一気に苦しくなります。
答案を見返すと、計算ミスなのか、考え方が分からないのか、暗記が足りないのかが見えてきます。原因によって合う指導は違います。計算ミスなら演習量を増やす塾、考え方の理解不足なら説明が丁寧な個別指導というように、点数だけで判断しないことが大切です。
学校の定期テストで平均点を超えているのか、下回っているのかも目安になります。平均点前後であれば基礎の補強、平均点を大きく超えているなら応用問題や受験対策へ進む、というように段階を考えます。この確認に十分な時間をかけておくと、塾との面談でも自分たちの状況を具体的に話せます。
お子さんの性格と気持ちを大切にする
どれだけ評判が良い塾でも、本人が行きたくなければ続きません。本人が納得して通えるかは、成績以上に大切なポイントです。
性格によって、合いやすい環境は次のように分かれます。
- 周りの友達に刺激されて頑張れる子は、集団指導
- 分からないところを人前で質問しにくい子は、個別指導
- 自分のペースで先に進みたい子は、映像授業
あくまで傾向ですので、実際にはお子さん自身の感想が一番の判断材料になります。部活の練習時間や、通塾にかかる時間も見落としがちです。移動が片道30分を超えると、毎週のことなので負担が積み重なります。
親が先に一校に決めてしまわず、候補を二、三校に絞って一緒に体験授業へ行くと、本人の納得感が高まります。帰り道に「どうだった?」と聞くだけでも、本音が出やすくなります。
集団指導・個別指導・映像授業の違いと向き不向き
塾は指導形式によって、授業の進み方も費用も大きく変わります。名前の知られた塾でも、形式が合わなければ力を発揮できません。ここでは三つの形式の特徴を、実在する塾の例とあわせて整理します。まずは全体を表で確認してください。
| 項目 | 集団指導 | 個別指導 | 映像授業 |
|---|---|---|---|
| 向いている子 | 競争や仲間がいると頑張れる | 苦手が多く、丁寧に教わりたい | 自分で計画を立てて進められる |
| 強み | 受験情報が豊富で進度が安定 | 一人ひとりに合わせて教える | 好きな時間に何度も見返せる |
| 注意点 | 授業についていけないと置いていかれる | 講師との相性で満足度が変わる | 意欲が下がると続きにくい |
| 費用の傾向 | 比較的おさえやすい | 回数が増えると高くなりやすい | 比較的おさえやすい |
表はあくまで一般的な傾向です。同じ形式でも塾ごとに特色が違うため、気になる塾では必ず内容を確かめてください。
集団指導の特徴と代表的な塾
集団指導は、先生一人が複数の生徒に同時に教える形式です。クラス全体の進度が決まっているため、入試に必要な範囲を計画通りに学べるのが最大の強みです。同じ志望校を目指す仲間がいることで、競争心や刺激も得られます。
首都圏では、高校受験に力を入れている早稲田アカデミーや、集団と個別の両方を持つ栄光ゼミナール、臨海セミナーなどがよく知られています。関西では、馬渕教室や能開センターが中学生向けの集団授業を展開しています。どの塾も、コースやクラスのレベルによって授業の雰囲気や宿題の量が大きく異なります。
注意したいのは、授業のスピードです。学校の授業で苦手な単元が多い場合、集団授業では質問する間もなく進んでしまうことがあります。基礎に不安があるなら、入塾前に学力診断テストを受け、クラス分けの基準や補習の有無まで確認しておくと安心です。
個別指導の特徴と代表的な塾
個別指導は、講師が生徒一人から二人ほどを担当し、その子の理解度に合わせて進める形式です。苦手単元をさかのぼって学び直せるため、中1の内容から抜けている中学生や、定期テストの点数を上げたい中学生に向いています。
全国に教室を持つ塾としては、明光義塾、個別教室のトライ、ベネッセグループの東京個別指導学院や関西個別指導学院などがあります。どの塾も、学校の教科書や進度に合わせた指導を得意としています。
一方で、講師は大学生のアルバイトが中心の教室もあり、講師との相性が満足度を左右します。体験授業で担当予定の講師に会えるか、合わなかった場合に変更できるかを聞いておきましょう。また、指導は週1回90分程度から始めるのが一般的で、回数を増やすほど費用も上がる点にも注意が必要です。
映像授業・オンラインの特徴と使いどころ
映像授業は、あらかじめ録画された授業を見て学ぶ形式です。東進中学NETのように、映像授業を軸にしたサービスがあります。自分の都合に合わせて学べるため、部活が忙しい中学生や、近くに通いたい塾がない地域の家庭に向いています。
分からない部分は巻き戻して見直せるうえ、得意教科は先取りして進められます。通塾の時間が不要なので、その分を学習に回せるのも利点です。
ただし、自分で学習を進める力が必要になります。見る時間を決めていないと、後回しになりがちです。使うなら、週に何回、何分見るのかを親子で決め、塾側の学習管理や質問対応がどこまであるかを確認しましょう。映像授業だけで不安な場合は、個別指導を併用する方法もあります。
学年別に見る塾の選び方
同じ中学生でも、中1、中2、中3では塾に求めることが変わります。学年ごとの学習内容や、学校生活の変化を知っておくと、塾選びの軸がはっきりします。ここでは学年別に、見ておきたい単元と塾の選び方を紹介します。
中1は勉強の習慣づくりを優先する
中1は、小学校から中学校への切り替えの時期です。定期テストが始まり、勉強の進め方が分からなくなる子も多くいます。この学年では、成績を急いで上げるよりも、勉強の習慣を作ることを優先して塾を選びます。
特に確認したい単元は次のとおりです。
- 数学は正負の数、文字式、一次方程式
- 英語はアルファベットの読み書き、be動詞と一般動詞
- 理科と社会は用語の暗記と、テスト範囲の整理
数学の正負の数や一次方程式でつまずくと、中2、中3の内容すべてに影響します。英語も、最初の文法の理解が後の学習の土台です。
この時期は、週1〜2回の通塾で、宿題の出し方やテスト前の対策がしっかりしている塾が合います。個別指導で基礎固めをしながら、勉強の進め方を身につけるのもよい選び方です。
中2は中だるみと部活の両立を考える
中2は、学校生活に慣れて気持ちが緩みやすく、「中だるみ」と呼ばれる時期です。部活動が忙しくなる一方で、学習内容は難しくなります。数学では連立方程式や一次関数、英語では不定詞や動名詞、理科では電流と磁界など、つまずきやすい単元が増えます。
この学年で成績が下がると、中3での挽回に苦労します。そのため、中2のうちに塾へ通い始める家庭が多く、受験を意識した集団クラスに入る時期でもあります。
部活との両立では、通塾の曜日と時間を柔軟に選べるかが大切です。大会前は休める、振替授業ができるなど、融通が利く塾だと続けやすくなります。映像授業と個別指導を組み合わせて、忙しい時期は映像で補うという方法もあります。
この時期に、苦手になりやすい英語の長文や、数学の関数の考え方を固めておくと、中3での伸びが違ってきます。
中3は高校選びと大学受験まで見通す
中3は高校受験が目前に迫る学年です。数学では二次方程式、平方根、三平方の定理、図形の証明が登場します。英語では関係代名詞、理科や社会は全範囲の総復習と、入試に出る内容を計画的に仕上げることが求められます。
この学年の塾選びでは、志望校に対する合格実績と、過去問演習の指導体制を確認してください。受験直前期は、学校の内申点対策と入試対策を同時に進める必要があるため、塾の面談で学習計画を具体的に示してもらえるかが目安になります。
さらに、高校選びは大学受験にも関わります。将来、国公立大学や早稲田大学、慶應義塾大学などを目指したい場合は、高校の進学実績や学習環境も見ておきたいポイントです。大学付属の高校に進めば、大学受験を経ずに進学できる道もあります。
中3の塾選びでは、高校受験だけでなく、その先の進路まで一緒に相談できる塾を選ぶと安心です。
体験授業と費用で最後の見極めをする
候補が二、三校に絞れたら、最後は体験授業と費用の確認です。パンフレットやホームページだけでは分からない部分が、実際に足を運ぶと見えてきます。ここでは、体験で見るべきことと、費用の考え方を整理します。
体験授業で必ず見たいポイント
体験授業では、授業の分かりやすさだけでなく、通い続けられる環境かを見ます。確認したい点は次のとおりです。
- 先生の説明が、お子さんにとって分かりやすいか
- 質問したときに、丁寧に答えてもらえるか
- 教室の雰囲気や、周りの生徒の様子は落ち着いているか
- 面談で、今の成績に合った学習計画を示してくれるか
授業の内容は、お子さん本人の感想を最も重視してください。「分かった」「また来たい」と言えるかどうかが、継続の大きな鍵です。
保護者は、教室の掃除の状況、自習室の使いやすさ、連絡の方法なども見ておきましょう。入塾をしつこく勧められた場合は、一度持ち帰って検討するのも大切な判断です。
費用は月謝以外も含めて比べる
塾の費用は、月謝だけで比べると見誤ります。入会金や教材費、季節講習など、年間でかかる総額を比べるのがポイントです。次の表を参考に、各塾へ確認してみてください。
| 費用の項目 | 内容 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 月謝 | 授業料の毎月の金額 | 回数や科目で金額がどう変わるか |
| 入会金 | 入塾時にかかる費用 | キャンペーンで免除される時期があるか |
| 教材費 | テキストや問題集の代金 | 年に何回、いくら必要か |
| 季節講習 | 春・夏・冬の特別授業 | 参加が必須か、任意か |
| 設備費など | 教室の維持にかかる費用 | 毎月かかる費用か、年に一度か |
特に季節講習は、通常の月謝とは別に高額になることがあります。入塾前に年間の見積もりを出してもらい、家計に無理のない範囲かを確認してください。金額は教室や学年で大きく変わるため、必ず各塾に直接問い合わせることが大切です。
通い始めてから合わないと感じたとき
入塾してから「何か違う」と感じることもあります。慌てて辞める前に、まず三か月ほど様子を見るのが目安です。習慣が身につくまでは、成績に変化が出にくいためです。
見直すときは、次の点を確認します。
- 宿題の量や難しさが、お子さんに合っているか
- 授業で分からない部分を、質問できているか
- 家での勉強時間が、少しでも増えているか
これらに当てはまらない場合は、塾の先生に相談してください。担当講師の変更やクラスの調整で改善するケースが多くあります。
それでも合わなければ、別の指導形式を試すのも一つの方法です。集団で苦戦していた子が個別に変えて伸びた、という例はよくあります。退会や休会のルールは入塾前に確認しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
